お役立ちコラム

日本無線の防災事業
~“総合防災サプライヤー”としての取り組み~

道路、港湾、空港管理

日本無線の防災事業~“総合防災サプライヤー”としての取り組み~【道路、港湾、空港管理】

たくさんの人・モノが行き交う道路・港湾・空港は、現代社会において欠かせない重要なインフラです。これらは日常生活の移動・輸送を支えるだけでなく、災害時には緊急車両・特殊車両の通行や、被災地への救助隊の派遣、支援物資の輸送などにおいて重要な役割を果たします。災害に備えるためには建造物の強化だけでなくこれらのインフラを管理・運営するシステムの整備、そして日々のメンテナンスは欠かせません。JRCの防災・減災の取り組みを紹介するコラム、最終回のテーマは「道路、港湾、空港管理」です。

インフラの発展は安全対策と災害対策と共に

高度成長時代は道路・港湾・空港・鉄道などのインフラ整備が進む中、この時期は戦後の混乱期でもあり、日本の交通インフラに関する大きな事故が増加していました。さらに大きな自然災害もたびたび発生し、近年では2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、そして2024年の能登半島地震では道路が寸断され、救援物資の輸送が困難な状況となりました。また、異常気象の影響もあり、2018年の台風21号では関西国際空港の機能障害が生じるなど、自然災害は経済や生活に多大な影響を与えています。

時代に合わせて次々と安全対策や災害対策が求められる中、JRC40年以上にわたり道路、港湾、空港の維持・管理システムを国内外の官公庁や事業者に提供してきました。今後は、大規模な災害時でも安定して稼働するシステムを構築することで救援・復旧活動や緊急輸送のルートを確保し、利用者や地域住民を守ることが課題と考えています。

道路を守ることが安全への近道

JRCが国土交通省や自治体に納入する道路情報システムは、「道路気象情報」「道路安全・維持管理」など、道路管理業務に必要な情報を収集しています。収集した情報は、道路情報板やカーナビにより道路利用者へ提供され、災害時の安全確保に貢献しています。最近では通行規制情報や気象警報・注意報などの情報を入手し、道路を走行するドライバーに対してより迅速・的確な情報提供が可能になりました。

また、工事業者が現場から携帯端末で通行規制の「開始・終了」を入力することで、通行規制情報をリアルタイムで提供することができるようになりました。このようなシステムの高度化により、情報提供をさらに迅速化・省力化し安全対策の強化を進めていきます。

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道路管制(イメージ)

海と空のルートを守る地上の拠点

港湾や空港は、平時は物流の拠点であり、災害時は緊急支援活動の拠点や緊急物資・人員などの輸送拠点になるだけでなく、周辺住民の避難拠点にもなります。

しかし、港湾分野は現在労働力不足に悩まされており、安全な運航を実現するうえで大きな問題となっています。また、気候変動問題に対応するため脱炭素化への取り組みも欠かせません。JRCは作業の効率化に役立つ、“海上交通監視ソリューション”“船舶入出港管理ソリューション”を実現するため、これらのソリューションに必要となる次世代海上通信における船陸間デジタル通信システムや、センサーフュージョン1を用いた船舶識別の自動化技術に取り組んでいます。
1 センサーフュージョン:複数のセンサーから得たデータを基に情報処理を行い高精度の情報を導き出す技術

航空分野においても、JRCはオペレーターの要員不足対応や物流の増加に伴う航空交通需要への対応として、「管制業務支援」に向けたソリューションに取り組んでいます。MLAT2ADS-B3といったシステムを導入し、動態監視による効率的な管制業務に貢献し、省力化対応に加え、航空機のCO2削減にも寄与していきます。
2 MLATMulti LATeration(マルチラテレーション) 航空機トランスポンダから送信される信号を複数の受信局で検出し、その時間差から航空機の位置を測定する監視システム
3 ADS-BAutomatic Dependent Surveillance-Broadcast(放送型自動従属監視) 航空機が有する動態情報(現在位置、高度、速度情報など)を地上管制や他航空機へ放送するシステム

マルチラテレーションシステムの紹介動画

JRCは長年にわたり災害に強いレーダーや無線機などを活用したシステムを納入し、港湾・空港管制業務の支援に役立ってきました。今後は自動操船の船舶に対応した陸上支援システムの構築や、航空機の増加対策、管制業務の効率化などが課題であり、AIなど新たな技術を活用したシステムの高度化でこれらの課題に取り組んでいきます。

おわりに

現代の人・モノの流れは複雑な構成で広域化しています。大きな災害が発生したとき、その影響が国内にとどまらず国外にも及び、当該社会に大きな混乱を招いてしまう可能性があります。国が社会情勢の変化や気候変動にも対応しながら目指す「可能な限り人的被害を少なく、少しでも社会的な影響を最小化して、強くしなやかな日本※4」の実現に向け、JRCではさまざまな活動を行っています。国や地方自治体などが行う防災・減災対策、河川の治水対策、河川や道路の維持管理業務、公共事業における防災無線通信設備・情報設備・制御監視設備などの社会インフラの管理運用をサポートしています。
4 出展:気候変動等を考慮した臨海部の強靱化のあり方 答申

これらの活動を通して社会的課題の解決を図り、日本だけでなく世界中の人々の安全・安心・環境保全に向けて取り組んでいきます。

 

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