お役立ちコラム

■第3回■電気通信のはじまり

■第3回■電気通信のはじまり

電気通信のはじまり(有線による通信)

第3回目は、電気通信の発見により情報伝達の方法が飛躍的に発展してきた歴史について紹介します。

1800年代以降の産業革命の時代は電気の発明により、電線による有線の通信が発達しました。その通信の始まりとしては、1700年代後半から様々な発明が行われて、世界の中でもイギリスで始まった産業革命がきっかけになります。主に機械、電気、化学の分野で飛躍的に技術革新が進みました。機械の分野では、蒸気機関などが始めに発明されて、紡績の機械などをはじめとする各種工業製品の動力に使用されました。また、蒸気船による大陸間の移動、蒸気機関車の鉄道への応用などで、一気に人類の活動の幅が広がり産業構造が変化して、様々な仕事も効率的に変わってゆきました。
更に電気の分野では、現在電圧の単位のボルトの語源にもなっている、有名なボルタというイタリア人が電池を発明しました。この電池の発明から、電磁石の原理なども発見されたことで、1837年にはアメリカのサミュエル・モールスが、文字を伝送する方法として紙テープに印刷する方式の「電磁気電信機」を発明しました。

モールスが発明した通信方式

モールスが発明した電信機は、電線を使用した有線の通信方式です。現代の主な通信方式となっているデジタル通信はこの時代に発明された通信の考え方を利用しています。例えば、2回目のコラムで説明した腕木通信は、腕木を通じて文字を送れるようにするために、それぞれの文字のパターンを決めていましたので、電気を使用しない一種のデジタル通信でした。電気が発明された産業革命後のモールスの発明技術でも、電気信号を使用して腕木通信と同じ様に文字をある決まったパターンで、離れたところに情報を伝送できるようにしました。その文字をパターン化する際に使用された発明が「モールス符号」です。
このあとに発明される音声の伝送ではアナログ通信が使用されていますので、情報量は多いのですが仕組みが複雑になってしまいます。しかし、このモールスによる通信は信号のオンとオフの単純な方法なので、現在のデータ通信の考え方の基本になっています。このモールスが発明したモールス符号の構成については、4回目のコラムで詳しく紹介させていただきます。

電線を通じた電気通信の原理

モールスは、符号のほかに「電磁気電信機」も発明しました。この機械は、電磁石の原理を応用して、受信側では電磁石の力で受信した符号を紙テープに記録することができます。
この機械を使って情報を伝送するには、あらかじめ送信側と受信側の回路を接続しておく必要があります。送信側で送信したい文字のモールス符号のパターンで電鍵を押すと断続的に電流が流れ、電線を経由して受信側に伝送されます。受信側では電流が流れると電磁石の力で、紙テープに符号が記録されて、受信した符号を文字として認識することができます。このように離れた場所でも電線を通じて電気信号として電流が流れる性質を使って、情報を伝送することができるようになりました。

電線を通じた電気通信の原理

初期に発明された電磁気電信機の受信側では、電磁石が動作して、その磁石の力により電磁石についている針が動作します。その針が紙テープに接触しているので、紙テープが一定の時間で巻き取られていると、受信した信号により紙テープにキズのような跡がつく仕組みになっていました。その跡をモールス符号として読み取ることで文字として認識することができますが、文字への変換は、紙テープを読み取る必要がありました。そこで受信時に直接文字に変換する方法として、電流が流れると音が発生するレシーバーを開発して、人間が聞こえた音を直接文字に置き換えて受信するようになってゆきました。

全世界を有線の電信網がつなぐ

この様に電線を電気信号が伝わることで、離れた場所の情報を飛躍的に速く、確実に伝送できるようになり、通信網が発達して欧米ではいち早く取り入れられました。この通信網はこれまで広く使用されてきた腕木通信の代わりに置き換わる様に発達し、また鉄道網の整備に合わせて列車の運行情報の連絡などもあり、電信網が築き上げられることになりました。さらに、国際的には、1866年にイギリス〜アメリカ間を結ぶ大西洋横断ケーブルが敷設され、電信網は海底ケーブルで地球上に張り巡らされると、地球規模の電信網が構築されて、主要な国の間では電報により情報の伝達時間が一気に短縮されてゆきました。

1866年にイギリス〜アメリカ間を結ぶ大西洋横断ケーブル敷設

さらに、1876年には音声を伝えるための電話機がアメリカのベルによって発明され、一般の人同士でも音声が伝送できるようになると、以降、電話としても電気通信としての役割は飛躍的に発達してゆくことになります。
また日本における電気通信技術として電信機が初めて伝わったのは、江戸時代の1854年に、日米和親条約を結ぶために「黒船」で来日した米国使節のペリー提督の、徳川幕府に献上した「エンボッシング・モールス式電信機」です。当時ペリーは、電線や電池など装置一式を持参し、横浜で約900mの電線を配線して通信実験を行い、技術的な差を見せて江戸幕府に開国を迫ったと伝えられております。

エンボッシング・モールス式電信機イラスト

この機械は、日本の電気通信の始まりとなる貴重な資料として国の重要文化財に指定されています。

この時代の電気的な通信の発明は、以前の通信手段と比較するとその効果は大きく、科学技術の発明によって、我々がより効率的に豊かな生活を送れるようになった初期の改革であったことがわかります。
この電気通信は、さらに電波を使って電線を引かなくても離れた場所で情報を交換できることに発展してゆきますが、この無線による通信でもモールス通信を使っていますので、次回はモールスが発明した符号の成り立ちについてご紹介したいと思います。