No.14
電波のはなし その1~磁界と電界~

電波とは何か?を説明できる人はどれぐらいいるのでしょうか。電波は、無ければ生活が成り立たないほど重要なインフラと化しています。しかし、ほとんどの人は日常生活の中で電波の正体を意識することはないでしょう。正体を意識しなくても電波の恩恵を受けながら便利に使える製品・サービスを提供するために私たちのようなメーカーが存在しているのです。
でも、電波の正体やその特徴を知ると意外に面白いこともあります。
- ラジオの音が途切れる
- テレビの映像がチラつく
- 満員電車でBluetoothのイヤホンから音が出なくなる
- 電子レンジの近くでスマホのWi-Fiが切れる
- 電波時計の針がときどき速く動く
などなど……。生活の中のちょっとしたことから電波の振る舞いを感じたり、電波に興味が湧いたりするかもしれません。本コラムでは、電波とは何か?を2回に分けて説明します。
そもそも「電波」って何?
電波は「電磁波」の一種です。
では電磁波って何?
電磁波とは「磁界と電界が相互に影響し合い、連鎖して起こる現象」です。
でも、これだけではちょっとよくわからない……という方が多いと思います。そこで、まずは「磁界」と「電界」についてご説明します。
磁界 ~電気から磁気が生まれる~
1820年、デンマークのエルステッドは「実験器具に電気を流すと、近くに置いていた方位磁石の針が動く」ということに気が付きました。その気付きを知ったフランスのアンペールが電気と磁気の関係について研究を始め、1820年のうちに「電気から磁気が生まれる法則」を発見したのです。
「電気から磁気が生まれる」現象

1. 電線を南北の方向に水平に張り、そのすぐ脇に方位磁針を置きます。このとき、方位磁針は電線と平行に南北を指しています。

2. 電線に電流を流すと…方位磁針の向きが変わります。 方位磁針の向きが変わったということは、磁気が発生したということになります。

磁気は、電流が流れる電線を中心として円を描くように生まれます。また、生まれた磁気は電線から遠ざかるにつれて弱まります。磁気の力が作用しているこの円状の空間を「磁界」と言います。

また、磁気の作用を表す線を磁力線といいます。磁気は電流が流れる方向に対して、どの位置でも同じ向きで作用しています。授業で聞いたことがある方もいると思いますが、右手を軽く握り親指を立てた形にしたとき、親指の向きは電流が流れる方向(磁石のN極)を表し、それ以外の指の向きは磁力線の向きを表しています。

電流を流す電線をグルグル巻いてコイルにすると、生まれる磁気が強まります。これを電磁石といい、モーターや磁石式クレーンなどの工業製品に応用されています。
電界~磁気から電気が生まれる~
電気から磁気が生まれるのであれば、磁気から電気を生むこともできるのではないかと考えたイギリスのファラデーは、研究を重ねて1831年に「磁気から電気が生まれる現象」を発見しました。
「磁気から電気が生まれる」現象

1. コイルに電流計をつなぎます。
コイルに電流は流れていないので電流計はゼロを指しています。

2. 棒磁石をコイルの中に入れた瞬間、電流計の針が一瞬プラス側に振れて

すぐゼロに戻ります。

3. 棒磁石をコイルの中から引き抜いた瞬間、電流計の針が一瞬マイナス側に振れて

すぐゼロに戻ります。
2⇒3⇒2⇒3……のように磁石をコイルの中で速く動かすと、電流が連続して流れることになります。
ここでの注意点は、電流が流れるのは磁石を「動かしたときだけ」ということです。コイルの中に磁石を入れっぱなしにしているだけでは電流は流れません。これは、磁石を動かすことにより、磁石のすぐ近くにあるコイルの中の磁界が変化するために起きる現象だからです。
このようにコイル(電線)に電流が流れると、そのまわりには「電気が作用する空間」ができます。電気が作用している空間を「電界」と言います。乾燥した日にプラスチックの下敷きを衣服でこすって頭に近づけると髪の毛が逆立ったり、セーターを脱ぐときにパチパチと音がすることで知られる「静電気」は、電界を感じることができる身近な例です。
さて、今回は磁界と電界についてお話ししました。次回はいよいよ電波のお話です。