■第4回■モールス符号の発明
モールス符号の発明
第3回ではモールスが発明した技術として、文字を符号化して伝送するための方式である「モールス符号」を紹介しました。今回は、モールス符号の使用方法と、その符号の内容について紹介します。
モールス符号は、1830年代の有線の電信機から利用され始めた基本的な通信方式です。用途としては、電気信号を利用して情報を伝送する際に、文字の単位で「ある決まったパターン」で符号に置き換えて使用されます。送信側では、主に手動で文字を伝送する際には電鍵などを使用してモールス符号に変換された信号のオン・オフにより送信して、受信側では逆に受け取った信号を紙テープ・音などから、符号を読み取って文字に変換することで情報として伝送されることになります。
モールス符号の構成
「モールス符号」の構成は、文字を効率的に情報として伝えるために、電気信号がオンになっている時間が短い短点「・」と、さらにオンの時間が長い長点「-」の2種類の符号の組み合わせで伝送することが考えられました。
モールス符号※(下記の「・」は短点、「-」は長点を示す。)
※総務省 無線局運用規則(別表第一号 モールス符号より欧文部分を抜粋)
モールス符号の長さのしくみ
例えば、「A」は「・-」(トツー)の短点と長点で、「B」は「-・・・」(ツートトト)の長点と短点3個で、それぞれ組み合わせを変えてアルファベットの文字に符号を対応させています。現在でも国際的な共通の決まりとして文字をモールス符号に変換することで情報を送信して、その逆に、受信は符号を文字に変換しています。
例として「JRC」の文字を送信する際の方法を動画にしましたので参考にしてください。
JRCをモールス符号で表した場合の図
動画からも解るように、モールス符号の短点と長点は、短点より長点が時間的に長い事で区別していて、長点1個は短点3個分の長さが目安になっています。1つの文字の符号の中の各点のそれぞれの間隔は、短点と同じ長さです。また、モールス符号が連続して送られてきても1文字ごとの区切りとして、文字の間に長点1個分(短点3個分)の空き時間を入れています。
長点が短点の3個分とされた経緯は諸説ありますが、長点に対して、短点が2個分だと聞き取ったときに差がわかりにくく、短点が4個以上になると通信時間が長くなってしまうので、長点は短点の3個分が最適な方法と考えられています。
モールス符号と文字の組み合わせ
モールス符号を見ると、短点と長点の組み合わせた数の合計が同じではなく、文字ごとに違うことがわかります。この違いは符号の割当てを決める時に、英語で使われる頻度の高い文字に対しては、短い符号が割り当てることで考えられました。例えば英文では使用頻度の高い文字である「E」は「・」の短点1個で、次に「T」も「-」の長点1個と短い符号が割り当てられています。一方で、使用頻度が低い「J」は「・---」で、「Q」も「--・-」と長点3個を含んでいるので、アルファベットの中では長い符号が使用されています。このように文字の使用頻度を考慮した符号の割り当てにより、通信時間を短くする工夫がされていることがわかります。
このように、モールス符号の初めは、1830年代の有線の電信機で利用された基本的な通信方式ですが、その後も主に船舶などでは光のオン・オフによる通信で使用されたり、また無線通信でも電波による基本的な通信方式として使用されています。
次回からは、無線技術が発見された歴史と、主に船舶で通信に使用された無線電信器、日本無線の会社創立後の無線技術を利用した製品開発の歴史などについて紹介したいと思います。