お役立ちコラム

日本無線の防災事業
~“総合防災サプライヤー”としての取り組み~

気象レーダー、河川・ダム管理

日本無線の防災事業~“総合防災サプライヤー”としての取り組み~【気象レーダー、河川・ダム管理】

「天気予報から災害を予測する」と聞いたことがある方も多いと思います。「気象予測」は、気象予報や防災士による解説だけでなく、たびたびテレビドラマの題材にもなるなど近年注目されています。予測材料となるデータはどのように収集しているのか?それらはどのように役立てられているのか?JRCの防災・減災の取り組みを紹介するコラム、今回のテーマは「気象レーダー、河川・ダム管理」です。

水災害の新たなステージ※1に対応

気象庁からは「大雨の年間発生回数は増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっている」と発表※2されています。線状降水帯が長時間にわたり出現・停滞して集中豪雨をもたらし、台風の大型化により被害が発生する時間・範囲が拡大するなど、水災害の発生頻度や被害が増大しています。災害は新たなステージに入っており、これに対応できる防災・減災に取り組む必要があります。
※1 新たなステージ:昨今の豪雨災害で極端な現象が発生していることや、いつ大規模災害が起こってもおかしくないこと
※2 出展:気象庁ホームページ | 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化

水・河川の管理においては「気象予測をもとにした降雨予測」「実降雨量の的確な観測と把握」「ダム・堰(せき)等河川管理施設の状態監視と制御」「河川管理情報の収集と提供」が基本となり、これらすべてでJRCの設備が活躍しています。

blog02_image10
日本無線 総合防災ソリューション(流域治水編)

観測・管理で水災害に備える重要な2つのシステム

水災害に備えるための重要なシステムを2つご紹介します。1つめは気象予測に欠かせない気象レーダー。予測精度は年々向上し、降雨予測や台風進路はほぼ把握できるようになりました。しかし、線状降水帯の発生やゲリラ豪雨などの局地的な大雨に対しては、気象レーダーやテレメーター※3観測雨量のデータを見なければ状況を把握できないのが現状です。JRCCバンド/Xバンド気象レーダーはマルチパラメーター※4化により、雨粒の形状まで高精度に測定し、降雨量の正確な把握と雨域の移動を的確に捉え、局地的な大雨対策に貢献しています。また、実雨量をテレメーターシステムでリアルタイムに観測することで、河川やダムへの水流出予測を立て、下流域の警戒体制の構築や避難の判断に役立っています。
※3 テレメーター:遠隔地に設置して水量や流量などを測定・監視・送信する装置
※4 マルチパラメーター:水平偏波だけでなく垂直偏波も使った二重偏波観測方式

今後は、今いる場所でどのくらいの雨が降り、災害が発生する可能性があるのかをリアルタイムに把握できることが重要となります。その対応にJRC3次元空間(高度15km、半径80km)を30秒で高速スキャンできるフェーズドアレイ気象レーダーと自律型テレメーターシステムの組み合わせによる高解像雨量把握ソリューションを提供していきます。

blog02_image13
Xバンド小型気象レーダー「RAINWATCHER」

2つめは水災害に備えるための重要な河川・ダム管理システムです。JRCはダム管理システムのトップメーカーとして、国土交通省直轄ダムをはじめ地方自治体や電力会社などにダム管理システムを納入しています。

令和元年東日本台風が上陸した際には、各地のダムで緊急放流が実施されました。ダム操作における緊急放流はよほどの大雨が降らなければ行われない操作です。数多くのダムで緊急放流が検討、実施される事態は、長年にわたりダムシステムに携わっているJRCも初めての経験であり、自然災害が「新たなステージ」に入ったことを実感しました。

現在、ダム・堰等河川管理施設の運用においては、このような激甚化する洪水発生への対応、ダム操作員の高齢化に伴う操作ノウハウの継承、洪水対処時の操作員の負担軽減など、管理運用面での高度化などが課題となっています。JRCは今後、国土交通省で行われている操作規則の改定方針も視野に入れ、AIを用いた操作運転支援処理技術やダム連携による洪水調節容量の確保および遅らせ支援等の放流計画作成に取り組み、より安全で使いやすいシステム構築を目指します。

blog02_image14
ダム管理システム

ダム・河川管理のDX化でさまざまな社会課題に対応 

災害の激甚化、社会インフラの老朽化に加えて少子高齢化による労働力不足などの社会課題を受け、河川の管理においても今後ますますDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速すると考えられます。令和6年度の国土交通省概算要求などでも公開された、SRS(Smart River Spot)では、ダム・河川などの整備・管理のDX化について言及されており、河川域の通信インフラを構築し、ドローンなどを活用した河川巡視・管理の高度化が推進されています。JRCにおいてもドローンの活用にいち早く着手し、すでに九州地区では自営回線構築による固定翼型VTOL※5(ドローン)航行実証を終え、国交省管轄のダム施設に対して当該ドローン航行インフラの構築を開始しました。今後もJRCでは河川管理のDXに対した取り組みを進めていきます。※5 VTOL:垂直離着陸機(Vertical Take-Off and Landing aircraft

blog02_image11自営網ネットワークを構築してドローンで河川巡視・管理

次回は「第3回:道路、港湾、空港管理、インフラ維持管理」のコラムをお届けいたします。

 

関連リンク世界初、フェーズドアレイ気象レーダーにより、台風に伴う竜巻の3次元高速観測に成功- 竜巻の立体構造や動態を解明 -エアロセンス社との協働により安全・安心な国土づくりに貢献します