お役立ちコラム

No.12
すばやい避難行動は子供たちがカギ「防災・ラジオ工作教室」

すばやい避難行動は子供たちがカギ「防災・ラジオ工作教室」

異常気象による災害が深刻化する昨今、災害に強い設備や環境を国や地域で整えることも重要ですが、一人一人が命を守る行動をとることも必要です。しかし「今まで大きな被害はなかったから私は大丈夫」と考える方も多く、それが逃げ遅れにつながってしまうこともあります。もっと早く行動していたら防ぐことができた被害もあったかもしれません。「逃げ遅れゼロ」を目指して今すぐにできる対策をお伝えするためにJRCが2021年より実施している防災教室についてご紹介します。

大規模水害から命と暮らしを守る流域治水

近年、気候変動の影響で記録的な大雨が増え、毎年大きな被害をもたらしています。国土交通省によると、過去10年間に約98%の市町村で⽔害⼟砂災害が発⽣しました。

平成24年〜令和3年の⽔害・⼟砂災害の発⽣状況
blog12_image02出典:国土交通省HP 河川事業概要2024 「Ⅰ 我が国の水害リスクの現状」

今後も⼤⾬や短時間強⾬の発⽣頻度や降⽔量などが増⼤することが予測されており、日本は海や河川の水位よりも低い都市が多いため、水災害の深刻化が懸念されています。また、流域の多くを市街化することで遊⽔地(水を溜める場所)が減少してしまったり、地下施設の利⽤が進んだりと、都市での⽔害リスクはますます⾼まっています。

2020年7月、国はダムや堤防の整備といったインフラ整備だけではなく、流域の住民や民間企業を巻き込み、避難などの体制強化面を含めた「流域治水プロジェクト」を開始しました。JRCも、気象レーダーやダム管理システムなど流域治水に関する技術を長年にわたり開発してきたノウハウを生かし、流域治水プロジェクトに役立つソリューションの提案に取り組んでいます。

※流域治水とは、気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえ、堤防の整備、ダムの建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される地域)にわたる流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方です。
引用:国土交通省HP 「流域治水」の基本的な考え方

地域防災の始まりは長野県の「逃げ遅れゼロ」から

2020年1月、JRCの主拠点がある長野県より、総合防災サプライヤーとして何か提案してもらえないかと相談を受けました。長野県では令和元年東日本台風(2019年)の災害をきっかけに、防災意識の高い社会の実現を目指し、県と市町村が一体となり防災・減災対策を推進する「信州防災『逃げ遅れゼロ』」20206月に宣言しています。そこでJRCは流域治水プロジェクトやこの宣言に沿い、得意とする社会インフラ基盤の提供に加えて、避難などの体制強化面の支援にも取り組むことにしました。JRCは、信州大学・信濃毎日新聞・SBC信越放送・長野県とタッグを組み、「長野SDGs地域防災プロジェクト」を立ち上げ、「防災・ラジオ工作教室」を協賛企画しました。

子供たちに発信する「防災・ラジオ工作教室」

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「防災・ラジオ工作教室」とは、防災意識を高めてマイ・タイムラインを作るための「防災教室」と、災害時にも活躍するラジオを手作りできる「ラジオ工作教室」を合体した小学生向けの講座です。

大人は過去の経験があるからこそ「私は大丈夫」と思い込んでしまう傾向が強いそうです。それに対して子供たちは現状を素直に受け止めやすいと言えます。そこで、子供たちが率先して避難行動ができれば大人たちの防災意識も高まるのではと考え、子供向けや親子向けのプログラムを組みました。

※マイ・タイムライン
政府による「逃げ遅れゼロ」の一環として始まったのが、国土交通省下館河川事務所「みんなでタイムラインプロジェクト」による「マイ・タイムライン」です。マイ・タイムラインは、台風の接近によって河川の水位が上昇するときに、 自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、とりまとめるものです。時間的な制約が厳しい洪水発生時に行動のチェックリストとして、また判断のサポートツールとして活用されることで、「逃げ遅れゼロ」に向けた効果が期待されています。

なぜ防災教室でラジオを作るのか?

blog12_image03日本無線オリジナルのラジオ工作キット

「命を守るために大切なこと」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?安全な場所への道を覚えること、防災グッズをそろえることが代表的かもしれませんが、常に変化し続ける状況を知るためにリアルタイムの情報を集めることも重要です。

ご存じの方も多いと思いますが、実はラジオは災害時の情報収集にとても役立ちます。現在の情報収集は携帯電話、スマホ、パソコンなどを通してインターネットで行うことが主流になっていますが、これらは基地局が正常に動いていなければ使えません。川の氾濫や土砂災害、地震などの影響により基地局が壊れてしまったとき、また、停電によりテレビが使えなくなってしまったときにラジオが大活躍します。

ラジオは放送局が取材した客観的な情報を扱っています。天気予報や災害に関することなど、信ぴょう性のあるさまざまな情報を発信しているため、普段でも災害時でも使えます。しかし、現代ではラジオ離れが進んでいると言われており、ラジオ工作に参加された方の中にもラジオを使ったことが無いという方が何人もいらっしゃいました。そこで私たちは、いざというときにラジオを使えるように、ラジオにふれて身近に感じてもらえるラジオ工作を防災教室と組み合わせました。

ラジオを作ることで、より一層防災意識を高めてほしいという思いをこめて取り組んでいます。

主なプログラムのご紹介

雨の降るしくみ、マイ・タイムラインの作り方、情報の集め方、そしてレーダーからラジオまで無線のしくみを実際に体験しながら、命を守る防災について学べるプログラムを用意しています。

マイ・タイムラインの作成
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気象予報士・防災士による講座
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2024年8月10日の講師:松元梓さん

ラジオ工作
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日本無線の防災・減災関連製品の見学
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2024年は夏休み期間に実施した他、小学校での出前授業も予定しています。

 
ご案内
第28回 水シンポジウム2024 in ながの
治水 ONE NAGANO ~令和元年東日本台風から5年 未来に向け私たちが学んだこと~
2024年10月31日(木)イベント内にて「小学生を対象とする防災・ラジオ工作教室」の講演を行います。
関連リンク
NAGANO SDGs PROJECT