お役立ちコラム

No.22
気象レーダーのはなし その1~雨雲レーダー~

気象レーダーのはなし その1~雨雲レーダー~

外出前や雨宿り中、洗濯物を干す前などに、スマートフォンの天気アプリで「雨雲レーダー」を確認する方も多いのではないでしょうか。地図上には、雨の強さが青、黄、赤などで表示され、雨域の位置や動きをひと目で確認できます。

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出典:気象庁 雨雲の動き

一般に「雨雲レーダー」と呼ばれる画面には、気象レーダーなどによる観測を基に解析した現在の降水分布と、そこから推定した短時間先の予測が表示されます。気象庁の「雨雲の動き」では、これらの情報が5分ごとに更新されています。

では、刻々と変化する雨の分布を、どのように捉えているのでしょうか。 

日本で活躍している気象レーダー

「雨雲レーダー」では、現在までの観測を基に解析した降水分布と、短時間先の予測を確認できます。その基礎となる重要な観測装置が、電波を使って広い範囲の雨や雪を捉える気象レーダーです。

日本では、気象庁と国土交通省が気象レーダーを運用しています。気象庁は、全国の降水分布に加え、空間を立体的に観測することで、天気予報に観測データを活用しています。国土交通省では、地表面付近を集中的に観測することで地上の雨を広範囲に面的に捉えることに特化しています。そのため、国土交通省の気象レーダーは、レーダ雨量計と呼ばれており、観測データは洪水予測やダム管理支援などに活用しています。 

気象レーダーは電波で空を見ている

気象レーダーは、電波を使って雨や雪が存在する位置、反射の強さなどを観測します。ドップラー機能を備えたレーダーでは、レーダーから見た降水粒子の移動速度も観測できます。これらのデータを解析することで、降水域の分布や強さ、動きの把握に役立てています。

電波と一口に言っても、ラジオ放送のようなMHz(メガヘルツ)帯や、電子レンジやWi-FiのようなGHz(ギガヘルツ)帯など、さまざまな周波数があります。

雨や雪を観測する気象レーダーでは、主にGHz帯のマイクロ波を使います。代表的な周波数帯は、Sバンド(およそ3GHz帯)、Cバンド(およそ5GHz帯)、Xバンド(およそ10GHz帯)です。

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気象レーダーでよく使われる周波数

 気象庁の気象レーダーではCバンドを、国土交通省のレーダ雨量計ではCバンドとXバンドが用いられています。用途や必要な観測範囲に応じて、適した周波数帯が選ばれます。 

気象レーダーで分かる雨の強さと位置

 気象レーダーは、山の上や鉄塔など、周囲を広く見渡せ、地形や建物の影響を受けにくい場所に設置されます。 

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CバンドMPレーダ雨量計
白い球体の中に気象レーダーのアンテナが入っている
(写真提供:国土交通省 四国地方整備局)

 アンテナの向きと仰角を変えながら周囲に電波を送り、雨や雪から戻ってくる電波を受信します。 

1. アンテナから電波を発射する
2. 電波の一部が雨粒や雪の粒で散乱し、その一部がレーダーへ戻る
3. 戻るまでの時間、電波の強さ、周波数の変化などを測る

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この観測を水平方向に360度行い、さらに仰角を段階的に変えて上空を走査(スキャン)することで、レーダーの周囲にある雨や雪について、「どの方向・距離に、どの程度の強さで電波を反射するか」という三次元的なデータが得られます。 

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観測データはコンピューターで処理され、たとえば次のような情報に変換されます。

•電波が戻るまでの時間とアンテナの向き → 降水粒子がある位置
•戻ってきた電波の強さ → 降水強度を推定するための情報
•周波数の変化 → レーダーから見た降水粒子の移動速度

こうして得たレーダーデータを、雨量計などの観測データと組み合わせて解析することで、私たちが見慣れた降水分布の画像が作られます。画像では、解析された降水の強さが段階ごとに色分けして表示されます。

気象レーダーの周波数は、どのように決まる?

では、雨や雪を観測する気象レーダーでは、なぜ主にS・C・Xバンドのマイクロ波が使われるのでしょうか。

周波数が高すぎる電波は、雨粒から強い反射を得やすい一方、雨の中で減衰しやすく、雨雲の奥まで届きにくくなります。
反対に、周波数が低すぎる電波は雨の中を遠くまで伝わりやすいものの、雨粒による反射が弱く、雨粒を十分に捉えにくくなります。

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周波数の違いで観測範囲が変わる

電波の波長は、周波数が低いほど長く、周波数が高いほど短くなります。
気象レーダーに適した周波数を考えるうえでは、観測する粒子の大きさと電波の波長との関係も重要です。

非降水性(地表まで落ちてこない)の粒子の大きさ
雲粒:半径0.001~0.01 mmほど

降水性(地表まで落ちてくる)の粒子の大きさ
霧雨:直径0.5mm未満
雨:直径0.5mm以上
あられ:直径が5mm未満の氷塊
雹:直径5mm以上の氷塊

このような「反射の得やすさ」と「降水による減衰のバランス」から、雨や雪の観測には主にS・C・Xバンドが用いられます。

S・C・Xバンドの中でも、波長が比較的長いSバンドやCバンドは、Xバンドに比べて強い雨による減衰の影響を受けにくく、広い範囲の観測に向いています。
一方、波長が短いXバンドは、強い雨では減衰しやすいものの、比較的狭い範囲を細かく観測する用途に適しています。

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バンド(周波数帯)によって異なる気象レーダーの特徴

全国をカバーするレーダーネットワーク

日本は山が多く、一つの気象レーダーだけでは山の陰になってしまい、電波が行き届かない場所がどうしても出てきます。

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観測できない場所

 また、地球の表面は丸いため、レーダーから離れるほど電波は地表から高いところを通ります。その結果、遠方では地表付近の雨や雪を捉えにくくなります。

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電波はレーダーから離れるほど地表から高いところを通る

 そこで気象庁は、地形の影響などを考慮し、国土のほぼ全域をカバーするよう全国20カ所に気象レーダーを配置して、観測網を運用しています。観測データは、降水の実況監視に加え、降水ナウキャストや降水短時間予報などにも利用されています。 

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気象庁のレーダー配置図(2025年7月現在)
参考:気象庁 気象レーダー

国土交通省も、河川管理や防災に活用するため、CバンドMP(マルチパラメータ)レーダーとXバンドMPレーダーを組み合わせた高性能レーダ雨量計ネットワーク「XRAIN」を運用しています。XバンドMPレーダーは、局地的な雨を高い時間・空間分解能で捉えられることから、都市部などの詳細な降雨監視に活用されています。

このように、複数のレーダーを組み合わせて観測網を構成することで、各レーダーの観測範囲を補い、より広い範囲の降水を捉えています。

なぜ気象レーダーが重要なのか

気象庁などが提供する降水分布や降水短時間予報は、気象レーダーだけで作られているわけではありません。気象レーダーの観測に加え、アメダス、ウィンドプロファイラ、ラジオゾンデなどの観測データを組み合わせて解析します。気象衛星の観測や数値予報の結果なども、目的と予測時間に応じて活用されます。民間の天気アプリでは、これらの公的データに独自の観測や予測を加えている場合もあります。

では、なぜ気象レーダーによる観測が重要なのでしょうか。

雨をもたらす雲は、目で見える範囲を超えて広がり、内部の状態も絶えず変化しています。地上から見上げるだけでは、その全体像や雲の中の降水分布を把握できません。気象衛星は広い範囲の雲を上空から観測できますが、地表付近の降水をレーダーと同じように直接捉えるものではありません。異なる観測手段を組み合わせることで、大気の状態をより立体的に把握できます。

局地的に急発達する積乱雲による短時間強雨や、同じ地域に強い雨が続く線状降水帯などでは、雨域の位置や強さが短時間で変化します。気象レーダーは、こうした降水の分布と変化を広い範囲で繰り返し観測できるため、実況監視に欠かせません。さらに、レーダーなどの観測データは、1時間先までの降水分布を示すナウキャストや、より先の降水予測にも利用されています。

ただし、レーダー画像や予測には、地形による遮蔽、強雨による電波の減衰、雨以外からの反射、予測時間が先になるほど大きくなる誤差などの限界があります。防災行動を判断する際は、雨雲の動きだけでなく、気象庁や自治体が発表する警報・防災気象情報、キキクル、河川水位、避難情報なども併せて確認することが重要です。