ローカル5Gで安全・安心を提供!
日本初の都市内高速道路上のローカル5G無線通信エリア構築

共同研究者のご紹介

会社名

首都高速道路株式会社

所在地

東京都千代田区霞が関1丁目4番1号

事業内容

首都圏における都市内高速道路の建設・管理、駐車場・高架下施設の建設・管理等

はじめに

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首都高速道路株式会社は、総延長327.2km、首都圏の大動脈として1日平均約100万台のお客さまにご利用いただいている首都高速道路の建設、維持、管理等を行っている企業です。「首都圏のひと・まち・くらしを安全・円滑な首都高速道路ネットワークで結び、豊かで快適な社会の創造に貢献」するという基本理念のもと、首都圏の大動脈である首都高速道路を24時間365日、より安全に、より円滑に、より快適にお客さまへご利用いただけるよう努めています。

ロゴおよび写真は首都高速道路株式会社様よりご提供いただきました。

共同研究の目的

都市内高速道路における「災害時の確実な情報収集」「平常時の業務迅速化」をローカル5Gシステムの活用で課題解決。
大規模災害や事故発生時における通信手段の確保、迅速な被害状況の把握を実現へ。

ローカル5G利用イメージ

共同研究の概要

同じ周波数を皆で使用するローカル5Gは、相互の電波干渉を避けるため、原則として自己土地または自己の建物内でのみ通信エリアを構築できます。高速道路にローカル5Gを展開する場合、ローカル5Gの制度に従い高速道路に沿った線状の無線通信エリアを構築し、他者土地である道路外に影響を与えない技術が求められます。本共同研究は、首都高速道路株式会社が管理する高速道路上における実証実験等を通じて、ローカル5Gによる線状の無線通信エリア構築に向けた課題の抽出を行い、都市内高速道路上へのローカル5G展開の実現性を検証するものです。
※「線状の無線通信エリア」とは、高速道路のような細長く広いエリアをカバーすることを意味しています。

土地の形状に合わせたローカル5Gによる通信エリアの構築例

首都高速道路の現状

首都高速道路株式会社様

首都高速道路は、開通から50年以上経過した路線が全線の約3割、30年以上経過した路線が全線の約2/3に達するなど、道路の高齢化が進んでいます。また、市街化が進んだ後に道路網を構築した箇所が多いため、高架道路やトンネル等、きめ細やかな維持管理が必要な道路構造物が全線の95%を占めています。1日100万台の交通量の他、大型車の利用率が都道の約5倍、高速自動車国道の約2倍となっており、道路の高齢化や道路構造物の割合とあいまって、非常に過酷な使用状況にさらされています。また、対処が必要な事故、故障車、落下物などの交通異常事象は、年間約4万件、およそ13分に1回の頻度で発生しています。これらの交通異常事象は、道路交通の支障や二次被害の回避のため、迅速な把握と対処が必要となっています。

首都直下地震等の大規模災害発生時等の災害時においては、緊急車両を通行させるための、救援ルートを開ける道路啓開を迅速に行う必要があります。道路啓開とは、1車線でも通行できるよう、高架区間の段差、目開きの修正や、道路上の散乱物の除去等を行うことです。この際、映像や画像による現地状況の正確な把握、現地と対策本部間の共有が必要不可欠であり、災害時にも確実に使用できる通信インフラの確保が至上命題となっています。

日本初の都市内高速道路上のローカル5G無線通信エリア構築

JRCは本共同研究および総務省が公募を行った令和4年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に、首都高速道路株式会社を代表機関とするコンソーシアムメンバーとして参加し、線状エリアをカバーするための超狭指向性アンテナや、360°カメラビュー「首都高ハイウェイビューNOW ON」の提案・開発等を行いました。実証実験は202210月から20236月までの約8カ月にわたり首都高速道路上で行い、都市高速道路における線状の無線通信エリア構築方法の確立およびシミュレーションと実測の差異分析による効果的なエリア設計手法の確立に向けて無線品質の評価等を行いました。

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首都高速5号池袋線に設置されたローカル5G実験設備

お客さまの声

首都高速道路株式会社 技術部 施設技術課 課長代理 高橋 義隆様にお話を伺いました。

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「大災害の経験から自営無線網の必要性を認識し、ローカル5Gの共同研究につながりました。線状エリアのローカル5Gを実現できれば道路以外にもいろんな可能性がある。なんとか成果を出さなくてはいけないという思いがありました。」と話す高橋様。

課題① 災害時の通信インフラ

首都高速道路において有線系の通信インフラはある程度完成しています。災害時においては、拠点間の通信はある程度確保できるものの、音声通話を除く移動通信は通信キャリアの回線利用がメインとなっています。弊社も東日本大震災を経験し、災害時に通信キャリアの回線がほとんど使えなくなってしまった状況を目の当たりにしました。そこから災害時の通信への影響が少ない“自営無線網”による通信インフラの確保について検討を進めています。過去に前例が無い“線状エリアでのローカル5Gによる通信インフラ構築”はまさに大きな課題だったのです。

課題② 道路と付帯設備の老朽化

首都高速道路は、道路に付帯する設備も老朽化が進んでいます。適切な整備や維持管理を実施していかなければ、「大きな不具合が起きるのではないか?」「それが発端で大きな事故が起こってしまうのでは?」といった不安やリスクを常に抱えることになります。リソースが限られる中、カーボンニュートラルや次世代の車両に合わせた設備も整える必要があり、何を優先させるのか非常に悩ましい現状があります。既存業務の高度化、効率化とともに業務のDX化を推進するにあたり、高速大容量の無線通信インフラは大きな起爆剤になりえると考えます。

ローカル5Gに期待すること

これらの課題を改善するため、「自営無線網の構築」「高速大容量データを処理」「移動しながら通信できる」、この点を考慮して検討を重ねました。候補では無線LANやBWA、プライベートLTEなどもありましたが、現時点ではローカル5Gが最も首都高速の環境に合っていると評価しました。一方で、ローカル5Gにより高速道路上に線状エリアを構築できるのか、という懸念があり、実機による検証が必要であると考えました。

今回の実証実験において、高速道路上に様々な道路形状に合わせた線状エリアを構築できたこと、高速道路外への電波漏洩を最小限に抑えることができたこと、走行しながら4K映像等の大容量データを送信できたことにより、ローカル5Gが高速道路に適用可能であると確認できたことは非常に大きな成果でした。併せて、アンテナの設置方法、遮音壁や標識等の道路附属物の影響など、さまざまなノウハウを得ることができました。一方、隣接する他者土地への電波漏洩を完全に抑制することはできないため、隣接事業者との電波干渉を避けるのが難しいことも課題として確認できました。電波伝搬シミュレーションを駆使しながら、複数の種類のアンテナを組み合わせる等して解決していければと考えています。

共同研究パートナーとしての日本無線の印象

以前に取り組んでいた屋外型無線LANに関する共同研究の実績に加え、ローカル5Gによる線状エリア構築にマッチした技術提案などを高く評価しました。また、新たに超狭指向性アンテナを開発いただき実際に高速道路に適応したところ、高速道路外への電波漏洩を抑制しつつ、想定より広いエリアをカバーできることもわかり、評価は間違っていなかったと思いました。複数の会社が関係する実験においても他社様を含めて適切に調整いただいたおかげで、プロジェクトを円滑に進めることができました。日本無線様を共同研究のパートナーとして選んでよかったと考えています。

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今回開発した超狭指向性アンテナは4車線道路の幅(20m)をエリアとしてカバーした上で、道路外への電波漏洩を最小限に抑えることができる

今後の通信インフラについて

ローカル5Gは設置して終わりではありません。長年にわたり適切に運用し、維持管理する必要があります。高速道路上にローカル5Gを設置すると、多くの隣接事業者と電波干渉調整が必要になる可能性があります。電波干渉調整のノウハウなども含めて検討していく必要があると考えています。また、移動しながら高速大容量の通信ができるとなると、さまざまな使い方を考えることができます。既存業務の高度化・効率化につながる使い方ともに、より先進的な使い方も提案できればと考えています。

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左:首都高速道路株式会社 技術部 施設技術課 課長代理 高橋 義隆 様
右:日本無線株式会社 関東支社 ソリューション営業1課 遠藤 圭一郎

共同研究JRCプロジェクトメンバーより

企業や自治体等がクローズなエリアにて5G通信インフラを整備できる「ローカル5G」は、「超高速」「低遅延」「同時多数接続」といった特長があります。無線による利便性を生かしながら、高精細映像伝送や無人ロボット等の遠隔機器制御、多数の機器から情報収集を行うIoT用途等、さまざまな業種での利用シーンにおいて、生産性の向上・高度化、価値創出を図る新たな情報システムとして期待されています。

今回、首都高速道路株式会社様との共同研究について機会を頂き、高速道路の特殊な通信環境下におけるローカル5Gによる通信実験を通し、その実用性や課題の抽出をすることができました。本共同研究や総務省ローカル5G開発実証の代表機関として豊富な知識と経験の下、プロジェクトを推進していただきました首都高速道路株式会社様、各定例会やフィールド試験等で課題解決や開発・検証を進めていく上で会社の垣根を越えて取り組んでいただきました総務省ローカル5G開発実証コンソーシアムの皆様に厚く御礼申し上げます。今後は、この経験を生かし首都高速道路へのローカル5Gの本格的な導入や線状エリアを有する他ユーザーに対しても横展開に向けて取り組んで参ります。

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左から ソリューション事業部  竹下 知伸 、丹下 透、河上 省吾、中山 雅春、大崎 友広

線状エリアを有するユーザーへの横展開

今回の共同研究で得られる技術を他の線状に広がる公共交通機関や道路、河川などのローカル5G環境構築にも活用することで、災害対策や道路の渋滞緩和、事故や損傷等の早期発見へ期待でき、今後も高度な通信環境の構築を通じて安全・安心な社会インフラの実現に貢献して参ります。

JRCが考える線状エリアを有するユーザーへの事業展開
本記事の内容は2024年1月に取材した内容を元に構成しています。

製品・システム

ローカル5G

詳細な特長やその他活用シーンについては以下のページをご覧ください。

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