IPマルチキャスト分散制御方式GMDSS海岸局システム
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IPマルチキャストによる分散制御方式の採用により、柔軟な拡張性に加えてより高い可用性を実現するGMDSS海岸局システム
- IPマルチキャスト無線通話制御システム
- 国内官公庁、民間事業者などでの長期運用実績により示された高い信頼性
- 世界海洋遭難安全システム(GMDSS)として、海上保安庁で稼働開始
はじめに
GMDSS※1海岸局とは
GMDSS海岸局とは、船舶が海上を安全に航行するために必要な情報を陸上側から通信を行う無線局です。GMDSS海岸局は船舶のための各種通報、方位測位、通話機能による交信など海上と船舶の安全向上を実現する、重要な役割を担っています。
※1 GMDSS(Global Maritime Distress Safety System) とは
海上における人命の安全確保を目的とした遭難・緊急・安全通信のための世界標準システム。
IMOが1992年からを導入したことで船舶安全航行に関する世界標準が定まり、各国に整備が推進された。
概要
第一世代IP化海岸局システムの課題
近年、無線 システムにおいてもデジタル化が普及し、通信回線のIPネットワーク化が広く利用されています。
当社では2014年、第一世代IP化海岸局システムとして、IPネットワーク集中制御方式GMDSS海岸局システムをリリースしました。本システムでは、従来必要とされていた多くの構成機器をソフトウェア化することで、シンプルな機器構成による柔軟な拡張性を実現しました。
集中制御方式においては、サーバー機器に障害が発生した際、音声通話を含む全ての機能が停止するという課題解消のため、サーバー機器を冗長構成とする必要がありました。ところが、冗長構成としたシステムにおいてもサーバー機器の切替時は、一時的にダウンタイムが発生するなどの問題がありました。
第二世代IP化海岸局システムへ進化
2021年、第二世代へ進化したIP化海岸局システムは、IPマルチキャスト分散制御方式GMDSS海岸局システムを採用しました。
本システムでは従来、サーバー機器が行っていた音声通話のためのセッション制御や、DSCメッセージの送受信制御を、IPマルチキャストネットワークを利用して、分散配置された操作端末が直接、無線機との間で処理します。これにより、一部の構成機器に障害が発生した場合でも、システム全体が停止せず運用を継続することが可能となり、サーバー機器の切替などによるダウンタイムが発生しません。この結果、従来のIP化海岸局システムのもつ柔軟な拡張性に加えて、より高い可用性をもつIP化海岸局システムを実現しました。
長期にわたる運用実績による高い信頼性
本方式は、2012年より国内官公庁向け(国土交通省、公共放送事業者など)、インフラ系民間事業者向け(民間放送事業者、道路事業者、ガス事業者など)の無線システムとして納入され、長期にわたる安定した運用実績より高い信頼性が示されています。
また、2021年には、世界海洋遭難安全システム(GMDSS)用として、海上保安庁において稼働を開始しています。
特長
高い可用性システム
従来の集中制御方式では、サーバー機器が操作端末と無線機間のセッション制御を行うことで、両機器の音声通信はサーバー機器を通して送受信されます。これに対して、分散制御方式を採用した第二世代では、操作端末と無線機とが直接、セッション制御を行うことで、マルチキャストプロトコルにより直接、両機器間で音声通信の送受信が行われます。DSCについては、変復調処理を無線機内部で行い、マルチキャストプロトコルにより直接、両機器間でDSCメッセージの送受信することで、サーバー機器が存在しなくてもDSCの運用が可能となります。更に、各構成機器は自機の制御・監視情報を、リアルタイムに IPマルチキャスト配信することで、全ての構成機器は常に同期した状態を維持します。
集中制御方式(ユニキャストIPネットワーク)
分散制御方式(マルチキャストIPネットワーク)
柔軟で拡張性のあるシステム構成
本システムは、IPマルチキャストを使用した分散制御方式を採用することで、操作端末、無線機、無線機用IPインターフェイス装置、そしてVPNルータというシンプルな構成機器によりシステムを構築できます。
本システムでは、音声通話やDSCメッセージなどの通信を集中制御するサーバー機器を配置せず、IPネットワーク全体でこれら通信を制御することで、各操作端末と無線機は、IPネットワークに接続するだけで必要な情報を送受信できます。
これにより、これら機器は物理的な制限を受けることなく、容易に広域に追加配置することが可能です。例えば、ある通信所の操作端末が障害で稼働を停止した場合でも、他局の操作端末から同通信所に設置された無線機を運用することや、臨時的に操作端末を増設することも容易で、緊急時においても柔軟に対応することが可能です。
また、本システムは、IPネットワークを冗長構成としてネットワーク障害による影響を抑えることで、仮に、一部の操作端末が故障しても、常に他操作端末からの運用が可能であり、システム全体としてダウンタイムを生じることなく運用を継続できるという高い可用性を有しています。
汎用性のあるIPネットワーク構築
本システムでは、外部IPネットワークと接続するためにVPNルータを使用します。これにより、マルチキャスト非対応ネットワーク、広域VPN、無線IPネットワークなど多様なネットワーク網においても本システムを構築することが可能です。
更に、VPNルータ間をVPNトンネル方式により接続することで、外部から本システムのIPネットワークへのアクセスを制限し、システムのセキュリティを高めることが可能です。合わせて、本システムのIPアドレス体系は、外部ネットワークや既設ネットワークと分離して独自に設定すること可能で、外部IPネットワークに影響することなく、本システムのIP設計を変更でき、保守性にも優れています。