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山岳地域で物資を輸送する無人航空機の開発に向けた通信実証に成功 ~公衆網や衛星測位基準局が少ない山岳地域において、自営網による安全な飛行に資する通信・センシングを実現~
研究情報日本無線株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:小洗 健、以下 JRC)は、「長野県航空機システム電動化プロジェクト」のもと、2022年11月28日から11月30日に長野市大岡聖山にて、JRC製無人移動体画像伝送システム※1を用いて無人航空機を安全に飛行させるための通信環境の確保などの実験を行いました。JRCは、将来の安全な自律航行実現に資する通信、センサーなどからなるトータルソリューションにより、公衆通信網を使用しない自営通信網による伝送路を構築しました。
北アルプスを背景に飛行する無人航空機
実験の背景
長野県は2016年に「長野県航空機産業振興ビジョン」をまとめ、新型コロナウイルスの影響で航空機需要の低迷が4、5年続くとの予測もある中、電動化やドローン市場の拡大に応じた研究開発を産学官連携で進めています。2021年に発足した「長野県航空機システム電動化プロジェクト」では、二酸化炭素の排出を減らしエネルギー効率を改善するため、世界的な開発競争が加速する電動航空機市場への参入を推し進めるとともに、山岳地域への無人航空機による物資輸送の実現を掲げました。従来のヘリコプターによる物資輸送は、コスト高が原因となり請け負う業者は減少しており、今後、代替物資輸送手段として期待される無人航空機の導入を視野に入れています。
本実験は、公衆通信網や衛星測位基準局※2が少ない山岳地域で、無人航空機を安全に飛行させる技術の確立を目指して、長野県工業技術総合センターからの委託事業として実施しました。
実験の目的
無人航空機を目視外で安全に飛行させるためには、上空における通信の確保といった環境整備が必要となります。本実験では、公衆通信網や衛星測位基準局が少ない山岳地域で、無人航空機を安全に飛行させるために、麓にいる操縦者や山小屋で待機する操縦者などに無人航空機の位置情報や無人航空機からの映像情報を、途切れることなく確実に通信する環境を確保することを目的としています。併せて、ミリ波レーダーシステムによるセンシング技術や、準天頂衛星システムからのL6D信号※3受信による高精度飛行位置検出技術の無人航空機への搭載についての検討を目的としています。
実験・システム概要
機体と地上との通信にはJRC製無人移動体画像伝送システムを用いて、飛行ルート上に自営通信網を構築しました。株式会社クエストコーポレーション製マルチコプタタイプの無人航空機に、前方監視カメラ、ミリ波レーダーおよび準天頂衛星システム受信機を搭載し、目視外での安全飛行に必要となると想定される情報が飛行中の機体から地上ステーション※4へ安定して伝送できることを確認しました。
地上ステーション
■JRCが想定する「安全な自律航行を実現させる通信要件」
以下のような情報を安定して確実に伝送すること。言い換えれば、高画質、低遅延で伝送することが求められる。
・カメラ…周辺の監視を行う
・ミリ波レーダー…悪天候時や夜間でも物標、障害物を探知する
・精密単独測位…衛星測位基準局の少ない山岳地域でも、準天頂衛星から受信した補強情報により精密単独測位を行う
近年の無人航空機をはじめとする次世代エアモビリティの発展はめざましく、今後はさらに社会実装に向けた法整備と技術革新が平行して進むと予想されます。本実験ではそのような情勢を踏まえ、将来の安全な自律航行の実現を見据え想定される通信要件を、JRC製無人移動体画像伝送システムを用いた自営通信網で実現しました。
JRCが目指す「次世代エアモビリティ向けトータルソリューションの提供」
JRCでは、次世代エアモビリティに関わる様々な技術開発を進めており、近い将来の安全な自律航行の実現に向けて、センサー/通信/測位とそれらのインテグレーションなど「次世代エアモビリティ向けトータルソリューションの提供」を目指し、関わるあらゆるステークホルダーの皆さまとの協業の可能性を追求し、新たな事業創出、市場への参入を目指していきます。
- ※1:無人移動体画像伝送システム:ドローン等に用いられる高画質映像の長距離伝送などを可能とするシステム
- ※2:衛星測位基準局:GPSに代表される世界的な衛星による測位システム(GNSS)において、移動局に向けて位置補正のための信号を発信する
お問い合わせ先
報道機関日本無線株式会社
経営企画部 広報担当
Tel:03-6832-0721
注)内容はリリース時現在のものです