導入されたお客様のご紹介
クラウドの活用によりASEAN各国のVTS管制官育成を効率的に一括管理
- 納入先
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マレーシア国 クラン市
ASEAN地域訓練センター(MATRAIN※1内)およびASEAN 9ヶ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
導入製品・システム
- VTS※2管制官育成Eラーニングシステム:
VTS管制官育成を目的とした初級者向け遠隔Eラーニングシステム。 - VTS System導入支援システム:
港へのVTS System導入計画立案のための設計を、独自で実施できるVTS運用管理者を育成する訓練システム。
導入前の課題
近年ASEAN諸国の経済発展は著しく、国際物流も活発に行われ、海上輸送の需要がますます高まっています。一方、港湾のインフラ整備が進まない国々も多く、港湾の整備と航行安全対策が喫緊の課題となっています。このため、ASEAN各国においては航行安全対策としてVTS Systemの導入が始まっています。しかしながら、航海士等の海事資格者はいるものの、VTS運用官としての十分な経験を擁していないことからIALA国際基準に準拠した管制官の育成が急務となっています。
導入の経緯
当社は一般財団法人日本航路標識協会※3が主催する「VTS人材育成協力プロジェクト」に2016年から参加し、翌年、マレーシアのASEAN地域訓練センター(MATRAIN内)にVTS管制官育成用のトレーニングシステム「VTSシミュレーター」を納入しました。その実績から、ASEAN各国をネットワークで結び、国境を越えた効率的な人材育成を可能にするVTS管制官育成EラーニングシステムとVTS System導入支援システムをASEAN向けに開発。2019年にASEAN地域訓練センターおよびASEAN 9ヶ国に納入しました。
システムの特徴
クラウドを活用した効率的な管理システム
- ASEAN各国に納入したトレーニング端末をネットワークで接続することで、マレーシアのASEAN地域訓練センターからデータの一元管理、高い保守性、リモートメンテナンスを実現しました。
- VTS管制官育成EラーニングシステムとVTS System導入支援システムをクラウドサーバー上に構築することで、ASEAN各国の研修生が自国の拠点において受講することが可能です。
- 処理データ増加による機能拡張が必要となった場合においても、クラウドシステムの為、ハードウェア拡張は必要ありません。ソフトウェアアップデートによる短期間での拡張が可能です。
- 本システムをクラウド上に構築したことにより、ASEAN地域で多発する雷害の影響があっても、データは全てクラウドサーバーにて保護されます。
VTS管制官育成EラーニングシステムによるVTS管制官育成
- 海事知識・通信英語・通信機器などVTSオペレーターに必要な専門知識を効率的に習得するなど、VTS System導入後の管制官育成を支援します。
VTS System導入支援システムによる運用管理者の育成
- AIS※4で受信した船舶データを用いた船舶衝突リスク解析ソフトウェア、レーダー探知距離計算ソフトウェアを導入し、VTS System導入検討を行うことのできる運用管理者の育成を支援します。
リアルタイムの船舶運航状況をシミュレーターに反映
- ASEAN各国にAIS受信装置を設置することで船舶運航状況をリアルタイムで受信。IWRAP※5、GIS※6画面上での監視トレーニングが可能になります。また、2017年にASEAN地域訓練センターに導入したVTSシミュレーターでの訓練においても活用可能となります。
船舶交通量を表示するIWRAP画面
船舶の位置情報を表示するGIS画面
システム構成
トレーニング風景
Eラーニングのトレーニング風景
左:VTS System導入支援システムを使用するVTS運用管理者
中央・右:Eラーニングのトレーニング風景
導入後の期待
これまでマレーシア国西部クラン市にあるASEAN地域訓練センターで受講していた研修機能をクラウド上に構築したことで、各国のトレーニングセンターにて実施可能となり、同センターでの訓練期間が三分の一に短縮されました。
このEラーニングシステムの導入により、短期間でのVTS管制官育成が可能となり、ASEAN地域の海運発展および船舶交通の安全確保に寄与します。尚、トレーニング修了者には、VTSオペレータートレーニングコース7 IALA※8モデルコースV-103 / 1 修了証が授与されます。
今後のシステム拡張
世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受け、ASEAN各国では、入国禁止や、国内の移動制限措置、外出禁止令など、大規模社会的制限が行われる中、各国間で渡航出来ない状況においても、アフターコロナの革新的な教育方法として注目されています。
※1 MATRAIN:海事局海事訓練センター。Maritime Transport Training Instituteの略。
※2 VTS:Vessel Traffic Services の略(船舶交通サービス)
※3 一般財団法人日本航路標識協会について
一般財団法人日本航路標識協会は、国土交通省、海上保安庁、地方自治体などから委託を受け、航路標識に関する調査研究及び調査設計を実施しています。また、例年、日本海事財団および日本財団から補助を受けて、将来の航路標識に関する調査研究を行っています。
※4 AIS:Automatic Identification Systemの略 (船舶自動識別装置)
※5 IWRAP:IALA Waterways Risk Assessment programの略 (IALA水路リスク評価プログラム)
※6 GIS:Geographic Information Systemの略 (地理情報システム)
※7 VTS Operator Training Course IALA Model Course V-103/1 Certificate
※8 IALA: International Association of Marine Aids to Navigation and Lighthouse Authoritiesの略(国際航路標識協会)
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