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世界初、フェーズドアレイ気象レーダーにより、台風に伴う竜巻の3次元高速観測に成功- 竜巻の立体構造や動態を解明 -

研究情報

日本無線株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:小洗 健)は、独自に開発した最先端Xバンドフェーズドアレイ気象レーダーを千葉市に設置し、2015年から試験観測を続けています。

Xバンドフェーズドアレイ気象レーダーXバンドフェーズドアレイ気象レーダー(千葉市)

概要

2019年10月12日、令和元年東日本台風が本州に上陸するおよそ半日前、海上にある台風の中心から約500キロ離れた千葉県市原市で竜巻が発生しました。当社の最先端Xバンドフェーズドアレイ気象レーダーは、この竜巻を近傍5キロ圏内で捉えることに成功しました。50メートルという高い空間分解能で、30秒という短時間ごとの台風に伴う竜巻を立体的に捉えることができたのは、世界的にも初めての事例となりました。

同レーダーが捉えた観測データからは、竜巻を引き起こした積乱雲や風の動き、立体的な構造等が三次元データとして詳細に観測できました。
この度、当社は、竜巻研究の第一人者である防衛大学校 小林 文明 教授らとともに本観測データを解析し、竜巻をもたらした積乱雲からの竜巻渦、さらには竜巻に伴い形成されたデブリボール※1の立体的な動態を明らかにしました。特にデブリボールの高度変化が、上空の渦強化や土地被覆の影響を受けていたことは新しい発見となっています。
(本研究成果は、American Geophysical Union(AGU)が発行するGeophysical Research Letters(GRL)に掲載されています。詳細はこちら。)

当社は、近年多発するゲリラ豪雨、竜巻等、短時間で急速に変化する気象現象に対して、最先端フェーズドアレイ気象レーダーを用いることで、発生前に観測される特徴を気象レーダーから自動的に探知・追跡する技術や、監視、予測技術の精度向上に役立つ研究を継続してまいります。また、次世代マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダーの開発を進め、各地の天候をリアルタイムで把握できるサービスの提供を目指します。

今後も総合防災サプライヤーとして、持続可能な開発目標の達成に向かって当社のもつ技術をさらに進化させ、国際社会へ貢献してまいります。

概要図1
竜巻を引き起こした積乱雲と竜巻のエコー強度(左図)
右上図の黒枠の領域内のレーダーと竜巻の位置関係(右図)
※2

図2 図1の左図の動画


※1:デブリボール:竜巻により巻き上げられた飛散物(枝葉、建物破片等)のエコー。
※2:図1の右図はGeneric Mapping Tools(GMT)で作図

お問い合わせ先

報道機関
日本無線株式会社
経営企画部 広報担当
Tel:03-6832-0721