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日本発の無人航空機の衝突回避に関する技術報告書がISOより公開
― 国際標準の速やかな規格開発に貢献し、無人航空機の社会実装を加速 ―
研究情報NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
日本無線株式会社
株式会社三菱総合研究所
日本無線株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:小洗 健、以下 日本無線)と株式会社三菱総合研究所(以下 三菱総合研究所)が、NEDOの委託事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果を基に取りまとめた、無人航空機の衝突回避技術に関する国際標準化機構(ISO)の技術報告書「ISO/TR 23267:Experiment results on test methods for detection and avoidance (DAA) systems for unmanned aircraft systems」(以下、ISO/TR 23267)が、2024年4月15日に公開されました。
技術報告書「ISO/TR 23267」は、無人航空機用衝突回避システムに関する規格「ISO/DIS 15964 Detection and avoidance system for unmanned aircraft systems」(以下、ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられ、新たな国際標準の速やかな規格開発に貢献することで、無人航空機の社会実装の加速が期待できます。
図1 NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験イメージ
概要
一般にドローンと呼ばれる小型~中型の無人航空機は、既に農業分野などで利用が広がっており、さらには災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途での活用に、大きな期待が寄せられています。一方で、他の航空機との衝突をどのように回避するかが無人航空機の安全利用における喫緊の課題です。
NEDOの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト※1」では、2017年度から無人航空機の衝突回避技術の開発を開始し、2021年度までにさまざまな実証実験を行い、衝突回避技術に関する複数の研究開発成果を公開してきました。
2023年度より、日本無線と三菱総合研究所が主要な研究開発成果を取りまとめ、日本発として提案したISO/TR 23267※2が2024年4月15日に公開されました。
現在、無人航空機システムの国際標準化を担当するISO/TC 20/SC 16では、レーダー、光学センサー(カメラ)などを無人航空機に搭載した衝突回避システムに関するISO/DIS 15964※3を開発中であり、発行された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/DIS 15964の要求事項の根拠と位置付けられるものになります。
技術報告書の内容
無人航空機の衝突回避に関しては、2023年10月に無人航空機の運航手順の規格である「ISO 21384-3:2023 Unmanned aircraft systems Part 3:Operational procedures※4」(以下、ISO 21384-3:2023)が衝突回避のCONOPS(Concept of Operations:運用構想)として新たな章を追加し、6ステップからなる基本的な衝突回避手順を規定しました。さらに、この6ステップの衝突回避手順を具現化する衝突回避システムとしてISO/DIS 15964の規格が現在開発されています。
今回公開された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/IEC 専門業務用指針2023年(第3版)の3.3TR(技術報告書)※5で示される、「関連するIS(国際規格)に関する特定の要求事項に係る根拠を提供するため」を目的として、NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験の中から重要な成果を取りまとめたものです。
具体的には、無人航空機の衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエアを本文に提示し、これを裏付ける根拠として各種実証実験結果などをAnnex(別紙)で示しつつ、引用先をBibliographyに明記する構成とすることで、レーダーと光学センサー(カメラ)を備えた機体による衝突回避システムの手順について説明しています。
また、衝突回避のモデリングとシミュレーション、機器単体の定量的評価試験、ハードウエア・ソフトウエアを試作搭載した飛行試験へとステップアップするテスト方法を解説することで、要求事項の根拠となる衝突回避CONOPSの6ステップにおける各種センサー機器の役割や探知・認識距離などを明示しています。
図2 無人航空機と有人航空機の衝突回避6ステップ
表1 衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエア
衝突回避の運用手順 (ISO 21384-3:2023) |
衝突回避システム (例:ISO 15964) |
ISO/TR 23267に記載されている根拠 | |||||||||
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有人航空機と無人航空機の相対速度 200km/hにおける衝突回避試験 |
無人航空機同士の相対速度 100km/hにおける衝突回避試験 |
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ステップ | 操作 | ハードウエア・ソフトウエア | ハードウエア・ソフトウエア | ハードウエア・ソフトウエア | |||||||
1 | 対象物の探知 | レーダー | レーダー | 光学センサー (カメラ) |
|||||||
2 | ターゲットの認識 | 光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
|||||||
3 | 回避機動 | 処理装置 | 処理装置 | 処理装置 | |||||||
4 | 回避結果の確認 | 光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
|||||||
5 | 元ルートへの復帰 | 光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
光学センサー (カメラ) |
|||||||
6 | 元ルートでの飛行 | 処理装置 | 処理装置 | 処理装置 |
表2 衝突回避試験における探知・認識距離
衝突回避の運用手順 (ISO 21384-3:2023) |
ISO/TR 23267に記載されている根拠 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
有人航空機と無人航空機の相対速度 200km/hにおける衝突回避試験 |
無人航空機同士の相対速度 100km/hにおける衝突回避試験 |
|||||||
ステップ | 操作 | 探知・認識距離 | 探知・認識距離 | |||||
1 | 対象物の探知 | 2km | ― | |||||
2 | ターゲットの認識 | 750m | 250m |
<各社の役割>
日本無線:衝突回避システムの評価試験と飛行実証
三菱総合研究所:技術報告書(案)の作成
今後の予定
日本発の技術報告書「ISO/TR 23267」が公開されることで、世界各国の無人航空機に関する製造者、販売者、購入者、顧客、業界団体、ユーザー、規制当局などステークホルダーが、個別に進めてきた衝突回避システムに対して、共通概念が提供されることが可能となり、現在開発が進められているハードウエア・ソフトウエアの国際規格(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられることで、早期の国際標準化を推進し、将来に向けた国際的な無人航空機の社会実装への貢献が期待されます。
共同のプレスリリース文はこちら(PDF 335KB)をご参照ください。
※1 ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト:
NEDOが2017年から2022年度の期間で推進した、【1】ロボット・ドローン機体の性能評価基準等の開発、【2】無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発、【3】ロボット・ドローンに関する国際標準化の推進、【4】空飛ぶクルマの先導調査研究の4項目で構成した、省エネルギー社会の実現を目指したプロジェクトです。
事業概要はこちらをご参照ください。
※2 ISO/TR 23267
概要はこちらをご参照ください。(英語)
※3 ISO/DIS 15964
概要はこちらをご参照ください。(英語)
※4 ISO 21384-3 2023 Unmanned aircraft systems Part 3: Operational procedures
概要はこちらをご参照ください。(英語)
※5 ISO/IEC 専門業務用指針2023年(第3版)の3.3TR(技術報告書)
概要はこちらをご参照ください。
関連情報
ニュースリリース(2023.10.06)
無人航空機の衝突回避に関する日本発提案が国際規格の改定版に採択・発行
― グローバルでの情報共有や技術開発、社会実装の加速が期待 ―
ニュースリリース(2021.11.08)
世界初、相対速度200km/hでの小型無人航空機の自律的な衝突回避に成功
~小型化/低消費電力化したセンサーで有人ヘリコプターを自律的に衝突回避~
お問い合わせ先
報道機関日本無線株式会社
経営企画部 広報担当
Tel:03-6832-0721
注)内容はリリース時現在のものです