日本無線株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役 社長執行役員:佐久間 嘉一郎、以下 JRC)は、2022年から、無人航空機(ドローン)による山小屋への物資輸送の社会実装に向けた取り組みを続けております※1。2026年は、昨年に引き続き長野県大町市にて、無人航空機で山小屋へ物資を運ぶ実証実験を行いました。
2026年の7月から10月にかけて、JRC、株式会社クエストコーポレーション、株式会社Mount Libraおよび株式会社ストーンモリスは、長野県大町市、新越山荘をはじめとする同市内の山小屋、信州大学DX推進センターの協力のもと、大町市の扇沢から種池山荘・新越山荘・針ノ木小屋の並ぶ山岳地域、通称“針ノ木サーキット”において、無人航空機を用いた物資輸送の実証実験を行いました。
地図出典元:国土地理院ウェブサイト
地理院タイル(国土地理院)を加工(テキスト・図形付加)して作成
離陸地点の扇沢ヘリポート(標高約1,550m)から、新越山荘(標高2,465m)へ無人航空機による物資輸送を行い、山小屋で働く方々に無人航空機による物資輸送の有効性を評価いただく機会としました。輸送品は、長期保存できる塩・砂糖を選定しました。
新越山荘オーナーの柏原様からは「今回の実験現場に立ち会い、想像していた以上に、ドローンの飛行において電波や通信技術が最重要であることを実感しました。また、飛行そのものについても、そのスピードと安定感に驚かされました。今回の実験で飛行航路が確定でき、実用化に向けて大きく前進したと感じており、期待がさらに高まりました。現在、山小屋の物資輸送はほとんどがヘリコプターによる空輸ですが、ドローンがヘリコプターを補完してくれる時代が、遠からずやって来ると確信いたしました。」というコメントを頂き、山小屋運営を支える現実的な物流手段としての可能性を確認しました。
本実験に参加した、山岳エリアでドローン活用を続けている株式会社Mount LibraのCEO石野氏は「今回の飛行航路では、運航面での目途がたった」と手ごたえを感じています。
本実証実験では、機体制御テレメトリ情報、および、機体に取付けられたカメラによる飛行中の映像、いわば「無人航空機の目線」のライブ映像を自営通信網で伝送し、飛行中の通信状況を確認するとともに、機体情報など各種データの取得、通信特性の評価をしました。
一般的に、無人航空機による山小屋への物資輸送では、飛行距離が長くなるため、操縦者の目視に頼らない目視外飛行が行われることが多くなります。
山岳地域など無人地帯での目視外飛行の許可申請では、本来、補助者を配置して第三者の立入りを管理することが求められます(レベル3飛行)。ただし、機体に取り付けられたカメラで飛行経路下を常時監視し、第三者の立ち入りが無いことを確認できる場合は、この監視を補助者の配置に替えることが認められます(レベル3.5飛行)。※4
今回、機体に取付けられたカメラによる飛行中のライブ映像を自営通信網で伝送した実績は、無人航空機による山小屋への物資輸送の社会実装の第一歩であると考えます。一方で、山小屋ごとに公衆移動通信網のサービスエリアや地形条件は異なるため、事業化を検討する際は、それぞれの山小屋の事情にあった通信網と飛行航路の構築が必要であることも確認できました。
山岳地域での物資輸送は、ヘリコプターや人力など手段が限られており、日本を代表する山岳県である長野県においても、山小屋への安定した輸送手段の確保が大きな課題となっています。
JRCは、継続的な実証実験で得られたデータとノウハウをもとに、無線通信×センシング×AI技術で、安全で安定した無人航空機運航を支える技術基盤を提供しながら、この課題解決に資する無人航空機の活用モデル「信州モデル」の構築と、山小屋への物資輸送の社会実装に向け、地域の皆様とともに、引き続き取り組んでまいります。そして、北アルプスから長野県内、さらには全国への展開につなげていけるよう、努めてまいります。
※1 これまでの主な取り組み
・ニュースリリース(2025.11.14)
日本初!自営通信網による長距離目視外飛行を実現~公衆移動通信網未整備の山岳地域で、無人航空機による物資輸送の実証実験を実施~
・ニュースリリース(2023.03.09)
山岳地域で物資を輸送する無人航空機の開発に向けた通信実証に成功 ~公衆網や衛星測位基準局が少ない山岳地域において、自営網による安全な飛行に資する通信・センシングを実現~
・日本無線技報 No.77 2026 トピックス:空のモビリティ
山岳物資輸送用無人航空機による地域課題解決の取り組み~自営網による安全飛行に資する通信の実現に向けて~
※2 自社開発の飛行航路検証ソフト
令和7年度次世代空モビリティ活用信州モデル創出補助金にて作成
※3 モニタ画像の出所
モニタ上のGCS画面は,Mission Planner(ArduPilot)でGoogle Mapsの 地図タイプ:航空写真(Map type:Satellite)(© Google)を選択・表示したものです。
※4
無人地帯での目視外飛行(レベル3飛行およびレベル3.5飛行)には、ここで記載した以外にも満たすべき要件があります。
注)内容はリリース時現在のものです