No.52 2007 ―特別寄稿―
PHSはWILLCOM1社??
WILLCOM is Only One Carrier of PHS??

株式会社ウィルコム 執行役員副社長
近 義起
Yoshioki Chika
Executive Vice President

  1995年にサービス開始されたPHSシステムは、家庭内ではデジタルコードレスの子機として、また事業所でもコードレス端末として、さらに屋外では携帯電話端末として使用することができる純国産のシステムとして誕生しました。事業免許はNTT系のNTTパーソナル、電力系のテレウォーカー(後のアステル)、旧DDI系のDDIポケット(現WILLCOM)の3グループに与えられ、ピーク時には約700万加入に達しています。しかし、約700万加入をピークに2002年度末には600万加入を下回るところまで下がり、事業者も撤退をよぎなくされ、2006年末には積極展開している事業者はWILLCOM1社となっています。
  しかしなぜ、WILLCOMは事業継続できているのでしょうか?
  日本において、同種の事業者がサービス競争し、所謂“新電電”が業界No1のシェアを得たケースは、WILLCOMだけではないでしょうか。この後、私なりの考察と、若干アピールをさせて頂きたいと思います
  既にWILLCOMのPHSシステムは10年を超えております。
  しかしその中で大きなシステム変更、基地局の置換え等することなくネットワークを高度化、サービスの多様化を行なってまいりました。また、今後もさらに高速化等行なっていきます。
  これは同業他社が10mW基地局を電話ボックスの上、電柱等に既存の施設を活かして設置したのに対し、DDI系の我々は活用できる既存の設備を何一つ持っておりませんでした。そこでマイクロセルであっても極力1基地局でカバーできる範囲を広く取りたいという苦しい中からの発想で500mW基地局を開発しております。それは市外電話のDDI時代に高速道路も新幹線の線路も持たなかったDDIがマイクロウェーブを選択したことに酷似しています。この500mW基地局はその後もソフトバージョンアップを繰り返し未だ現役で新サービスにも対応し元気に稼動しております。
  上下非対称出力の500mW基地局は当時は開発不可能ともいわれておりましたが、難易度が高いものほどその後の優位性は保たれる。その後、事実、市場で性能を証明してからも中々キャッチアップされませんでした。
  次に、WILLCOMはベンチャーであり、常にチャレンジャーでありたいと思っています。「何をやるかWILLCOMはわからない」といういい意味での市場への期待感、恐怖感?を与えていければと思っています。実は電話機によるショートメールサービス、音楽配信、テレビ電話、フルブラウザ、W-SIM、WILLCOM発の新機能は多数あります。サービス面ではデータの使い放題、音声定額等々。
  一例として、前出W-SIMは約3年の開発期間を経て2005年12月に商用1号機を市場投入しました。この3年の開発期間は実際はアンテナの開発期間であったと言い換えても過言ではありません。商用レベルに達したという判断で市場投入していますが内蔵アンテナによる物理的に不利な状況、小型化による性能劣化。この全てを解決する夢のアンテナ。性能の追求には終わりはありません。
  このW-SIMの投入により約1年間でWILLCOM関連だけでも9モデルの新商品が発売されました。これは少量多品種の実現でもあります。無線通信部分を分離したことによりジャケット側のメーカーは開発期間の短縮も図れ、セットとしての開発の難易度は下がり今までではありえなかった新たな市場も開拓できています。WILLCOMが関知しないところからPHSを使った新しい商品が生まれる土壌もできています。
  今後もチャレンジ精神を忘れずに、市場への存在感をアピールし続けたい。アピールできる種を仕込んでいきたいそれがWILLCOMの存在価値と思っています。
  PHSシステムはここ数年新しい展開を迎えています。ネットワークのIP化を進めるにつれ、ワイヤレスブロードバンドシステムとしてはじめて定額料金のデータ通信サービスを提供。ネットワーク容量、周波数利用効率の高さを生かした音声定額を実現。直近では2007年1月にW-OAM対応の音声端末発売(JRC製)、2006年度末(予定)には64QAM対応データカード(PCMCIA)の市場投入。このデータカードで64QAM技術を商用レベルで確立し、音声端末への展開、及び先にはW-SIMでも実現を考えています。
  また海外においては中国をはじめ、台湾、タイ、ベトナム等で導入され、加入者は1億人を超える勢いであり、世界的に見てもGSM・CDMA1Xに次ぐ通信システムとなっています。
  PHSはWILLCOM1社??答えはNoです。私自身、今後もMoUの立場からも海外に対して積極的に日本発のPHSを推進し、日本国内に直接的、間接的にもメリットがもたらされるよう尽力したいと思っております。

プロフィール

1962年東京都生まれ。1985年茨城大学理学部(物理学科)卒業。1985年第二電電株式会社(現KDD1株式会社)入社。1994年株式会社DDIポケット企画に出向、2000年DDIポケット株式会社技術企画部長、2002年同社取締役技術本部長、2003年同社取締役プロダクト統括本部長兼技術本部長、2004年同社執行役員プロダクト統括本部長兼技術本部長、2005年社名変更により株式会社ウィルコム執行役員プロダクト統括本部長兼技術本部長、2005年同社執行役員CTO技術統括本部長、2006年同社執行役員副社長、現在に至る。


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