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2007年10月5日 [2007.10.4 プレスリリース]

「新方式SAW溶液センサと小形測定回路を開発」- 溶液に直接入れることができるディップ式センサを実現 -

日本無線株式会社(代表取締役社長:諏訪頼久、以下日本無線)と国立大学法人静岡大学(以下静岡大学)発ベンチャー企業であるSAW&SPR-Tech 有限会社*1(代表取締役社長:塩川祥子、以下SST)は、液体の電気的性質を測定することのできる弾性表面波(SAW)溶液センサとその小形測定回路を開発しました。

開発したSAW溶液センサは、フォトリソグラフィー(光を用いたパターン転写技術)を用いる方法でセンサデバイス電極上に空間構造(ふた)が精度良く形成されていることが特長です*2。この"ふた"によりSAWを送受信するための電極が溶液から保護され、SAW溶液センサを直接溶液の中に入れることができるようになりました。このように、溶液に直接入れることのできるセンサをディップ式センサと呼んでいます。一般的なSAW溶液センサでは、センサを溶液の中に入れるのではなく、測定する溶液をポンプや細いチューブを使用してセンサデバイス上に導入するため、形状が大きく、煩雑な手間を必要としました。しかし、今回開発したディップ式SAW溶液センサは、小形で操作性が良く、様々な応用へ適用が可能なセンサシステムとなりました。また、センサデバイスに参照信号を入力する信号発生器と、センシング信号を分析するための測定回路も新規に開発し、センサ測定系の大幅な小形化も実現されました。

今回のSAW溶液センサシステムの原理は、SAW が伝搬しているデバイス表面に溶液を付加すると、溶液の電気的・機械的性質による影響でSAW の音速と減衰率が変化することを利用したものです。この原理を応用し、溶液の電気的性質(比誘電率、導電率)を測定することが可能となります。実際にSAWセンサを用いて、ミネラル水の識別*3 やウイスキーの識別*4 が可能であることが既に開発者である塩川(SST)らにより確認されています。今回は、この原理に基づく比誘電率、導電率測定に関して、さらに測定精度を向上させるための補正式*5 が導入されたソフトウエアも含まれているのが特徴となっています。本ディップ式SAW溶液センサは、飲料水、工業用水、工業排水、発酵食品、醸造食品、アルコール等の様々な溶液の分析、品質管理などに対応できる可能性があるため、様々な分野のパートナーと共同で基礎評価を行うことも検討しています。基礎評価により良好な結果が得られれば、パートナーとの共同研究等を通して実用化を目指します。一方、今後、SAW デバイスの特長を活かした多チャンネル・多機能化の検討、さらには小形化によるウエアラブル化の検討も進め、SAWセンサの新たな応用を開拓していく予定です。

画像:ディップ式SAW 溶液センサ
  1. SST は、元静岡大学教授の塩川祥子(現社長)が2004年10月に設立した静岡大学発ベンチャー企業です。森泉(東京工業大学名誉教授)および塩川らは、1987年にすべり弾性表面波が溶液中での伝搬減衰が少ないことを明らかにし、これを用いて溶液の粘性センシングが可能であることを発表しました。その後1990年塩川らは伝搬面圧電結晶を露出すると、溶液の電気的特性(誘電率・導電率)も高感度に計測できることを見出し、これにより溶液の力学的特性と電気的特性が同時に測定できるようになり、SAW溶液センサが様々な分野で注目されてきました。現在も静岡大学にて近藤淳准教授に研究が引き継がれています。SST は、これら大学での研究成果をもとにSAW溶液センサの実用化を目指しています。
  2. 「SH-SAW ディップ式溶液センサ」、第36回EMシンポジウム、pp.49-52 (2007年5月) 、小貝崇、谷津田博美、塩川祥子
  3. 「すべり弾性表面波センシングシステムを用いた水の識別」、日本音響学会誌Vol.51、No.1、(1995)、pp.71-75、塩川祥子、近藤淳
  4. 「すべり弾性表面波センサを用いた液体試料の識別」、電子情報通信学会論文誌、C-2、Vol.J78-C-2、No.1、pp.54-61(1995年1月)、近藤淳、塩川祥子
  5. 「SH-SAW 溶液センサにおけるSSBW の影響とその補正方法」、第28回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム、(2007年11月発表予定)、小貝崇、谷津田博美、塩川祥子

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日本無線株式会社 研究開発本部

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  1. 内容はリリース時現在のものです